日本の労働生産性(ちょっと真面目な話)

日本の労働生産性(ちょっと真面目な話)

日本の労働生産性(ちょっと真面目な話です)

外国人労働力の受け入れ拡大が決まりました。これを受けて思う所を書いてみたいと思います。

労働力としての外国人の受け入れについては切り口によって見える景色が大きく異なります。これを念頭に置いて読んでいただけるとありがたいです。

日本の労働生産性はそんなに高くない

一部抜粋です。詳細なデータはこちらから取得してください。公益財団法人日本生産性本部:労働生産性の国際比較

世界銀行等のデータによる労働生産性(2016年) ※注1)単位:購買力平価換算USドル(世界銀行換算レート)

国名 労働生産性※1 国名 労働生産性※1
1 アイルランド 162,765 26 マルタ 86,250
2 カタール 159,702 27 日本 81,777
3 サウジアラビア 150,617 28 イラク 81,676
4 ルクセンブルク 147,512 29 ニュージーランド 74,327
5 シンガポール 137,992 30 スロベニア 74,209
6 米国 124,764 31 チェコ 71,344
7 ノルウェー 117,627 32 トルコ 70,830
8 ベルギー 114,759 33 ギリシャ 70,692
9 スイス 114,336 34 韓国 69,833
10 香港 113,588 35 ポルトガル 68,657
11 フランス 104,347 36 スロバキア 66,728
12 オーストリア 103,797 37 リトアニア 65,208
13 オランダ 102,788 38 ポーランド 65,158
14 イタリア 101,616 39 クロアチア 61,893
15 デンマーク 100,297 40 マレーシア 60,951
16 スウェーデン 99,184 41 ハンガリー 60,195
17 ドイツ 97,616 42 エストニア 59,970
18 フィンランド 96,638 43 ラトビア 57,129
19 オーストラリア 94,538 44 ルーマニア 53,522
20 スペイン 91,943 45 ボスニア・ヘルツェゴヴィナ 53,015
21 アイスランド 90,197 46 チリ 52,881
22 アラブ首長国連邦 90,106 47 カザフスタン 52,566
23 英国 89,658 48 パナマ 52,425
24 カナダ 88,359 49 ロシア 46,930
25 イスラエル 86,690 50 モンテネグロ 46,858

この表の通り、2016年の日本の労働生産性は27位です。

では労働時間は?

一人当たり平均年間総実労働時間 ※出典:独立行政法人労働政策研究・研修機構

国名 時間 国名 時間
1 韓国 2,069 10 スウェーデン 1,621
2 アメリカ 1,783 11 フランス 1,472
3 ニュージーランド 1,752 12 オランダ 1,430
4 イタリア 1,730 13 ノルウェー 1,424
5 日本 1,713 14 デンマーク 1,410
6 カナダ 1,703 15 ドイツ 1,363
7 イギリス 1,676
8 オーストラリア 1,669
9 フィンランド 1,653

頑張って働いてるし労働生産性もすこぶるいいアメリカ。
頑張って働いてるけど労働生産性がいまいちな日本。

人口比とか土地の広さとか簡単に比較できるものではないですが、頑張ってる割には稼げていない実態はこんなデータから見えると思います。

 労働人口の減少は生産性向上で賄えないのか

上記データで見える1つに『労働生産性はまだ伸びしろがある』という事があります。
労働人口が減っても労働生産性を向上させればいいわけですから、本来はそこまで切迫した状況ではないはずです。

ましてや実際の労働人口は5年連続で増え続けています。
雇用期間が延び高齢者が今まで以上に働いている事や女性の労働力参加率が上昇しているからです。

ではなぜここで外国人労働力の受け入れ拡大を叫ばなくてはならないのか。

上記情報があるから、結局大手企業の求める『安い労働力』の確保を目的としてるのだろうと邪推されるわけです。

安い労働力を使うメリットとデメリット

安価な労働力が悪いとは思いません。問題はそのあとです。
単純に人件費が下がりますから利益率が上がります。当然、利益率が上がれば企業の収益は増えます。

正の循環に移行するためにはその後の対応で下記2パターンが必要です。

  1. 従業員に還元:余剰な収入を得た従業員がその財で消費活動を行う。
  2. 生産性向上に投資:一人当たりの生産性が向上するため利益率が上がり国庫が潤う。

そしてこの利益が企業や国民に跳ね返ってきて…。という正の回転を繰り返すわけです。

町工場の多い土地で仕事をしていて思う事

大企業の生産性向上の手法、これが問題であるように思います。
私の見ている範囲での物事でしかありませんが『下への押し付け』が多分にあるように感じています。

例えば、ステンレスのスプーンを製造している町工場。
ネット通販が多くなったご時世ですから、大手企業さんも出品用の情報を欲しがります。
町工場の70代の社長に対して「白抜きの画像をください。商品サイズや商品の特徴をExcelにまとめて提出してください。」そんなオーダーを出します。
金属製品を扱う町工場で白抜き画像なんて撮影できませんから外注に出します。

この状況で、もっと値下げしろと値下げ圧力をかけてきます。
その社長は長年の付き合いもあるのでと要請を受け入れます。

大手さんは良いでしょう。自社のコストは掛けずに欲しい情報を手に入れてますからある意味生産性向上です。
でも、工場からすると余計なコストが出て余計な労力をかけて利益率も下がる。
正直いい事はありません。

あえてとてもミニマムな事例を書きましたが、他社の労力を使い更に値切るという生産性向上を行っているのは周知の事実だと思います。

この状況を自社社員に置き換えたものが外国人労働力の受け入れ拡大を要請する経済界の大問題です。

生産力を上げる投資をしない、だから生産性が向上しない

今を見ていると将来の投資を渋る傾向があります。

今安価に済ませる方が得をしたような気分に陥る事があります。

果たしてこれは正解か。

そこを考えないといけない差し迫った状況にあるのではないでしょうか。

今の中小企業はパソコンを使った手作業が多い

私の様にパソコンに慣れたスタッフなら多少の効率化はあるでしょう。
でもパソコンを使う事で余計に時間のかかる方もいます。

なぜなら、中小企業ではパソコンは『綺麗に書く機械』『間違えない計算をする機械』であってそれ以上でも以下でもないからです。
DBを構築しようとか、もっと効率化するためにパソコンを使おうとか、発想をしても莫大なコストがかかります。
パソコンが手作業の延長にしかなっていない理由がこれです。

商品DB作って顧客との窓口作ってWEB-EDIを構築して、この3つを行うためのコストは大体1500万くらいです。
東京だと2000万を超えるかもしれません。
値切られて利益率の落ちている中小零細にここへ投資する勇気はなかなか生まれません。

大手企業が造って中小にプレゼントするだけで、だいぶ変わると思うんですけど、大手企業さんはここでも確実な種益を狙いに行きます。
「使わせてやるから金払えよ」ってやつです。

まとめ

今のままで居たいから安い労働力が欲しい。
それではいつまでたっても生産性は上がりません。
どこかで誰かが仕組みを構築し安価なコストでばらまかなくては何時までもこのままでしょう。

数年後に「もっと安い地域から労働力を受け入れる」と言わない事を祈ります。

今損しても、次の為の一手を考えてお仕事していきましょう。

ちょっと真面目な話でした。