モール出店で飯は食える?今後のEC業界の変化を考える。
モール出店で飯は食える?今後のEC業界の変化を考える。
楽天市場内のRON会議室にこのような投稿がありました。
最近ある経済関連の情報サイトにこんな記事が載りました。ECモールは最初はお店をいっぱい集めて商品を充実させるけど、お客さん側に「そこで買い物する習慣」が出来上がったら、直営店や大企業だけ残して中小のお店は冷遇して追い出してしまう。お店側にしてみれば冗談じゃないが、ECモール側はそれが一番楽で儲かる道だからそうなってしまう。
要約するとこんな感じです。三木谷社長は政府の規制案に対して「国が規制するとイノベーションが阻害されてしまう」と反対しているようですが、楽天が目指しているイノベーションとは、まさにこの記事にあるような代物ということでしょうか?
そう言えば、昔は楽天市場のトップページをPCで見ると左端のサイドバーに「ショップ一覧」というリンクがありました。クリックすると実際に、全ショップの一覧が表示され、ジャンルで絞り込むこともできました。つまり、どんなに小さなお店でも一応トップページからの導線があったのです。
ですが、一昨年(だったかな?)この一覧が無くなりました。「ショップ一覧」のリンクをクリックすると、なぜかショップ一覧ではなく、代わりに、楽天直営店や大企業のショップの一覧、それと最近閲覧したショップの一覧、この2つが表示されるようになりました。この時点でトップページから小さなお店への導線は無くなりました。さらに最近、とうとうサイドバーの「ショップ一覧」のリンク自体が無くなり、その場所には楽天直営店と大企業のショップへのリンクが現れました。(皆さん、お気づきでした?)
今度の新春カンファレンスのテーマが「共に歩く」だそうですね。一体、楽天は誰と共に歩くのでしょうか?
※投稿者様、転載させていただきました。
という事でいろいろ考察してみたいと思います。
ECモールの稼ぎのネタは何か①
楽天市場やAmazon、Yahoo!、Wowma!などのモールは物販がベースで成り立っています。
まとめると次のように分類できます。
- モール管理者
・Amazon
・楽天市場
・Yahoo!ショッピング
・Wowma! - 店舗運営者
・Amazon
・楽天市場
Amazonや楽天は自分たちが店舗でもあり、モール管理者でもあります。
Yahoo!やWowma!は自店舗の無いモール管理者です。
モール管理者の収益はどこから来るのか。
従来は店舗からの売り上げINCENTIVEや広告費用でした。
しかし、従来通りであれば現在モールで起こっている様々な仕様やルールの変化の必要はありません。
この変化の鍵は『AIの性能と製造コストが低下』にあります。
AIはとても身近な存在になった
AIは性能などを問われなければ、テキスト片手に私でも作成できるような身近な存在になってきました。
今後、あらゆるところでAI○○というのが出回ってくると思います。
AIの基礎は強化学習ににあります。
状態/状況 ⇒ 判断 ⇒ 行動 ⇒ 環境変化 ⇒ 報酬
ECの現場に合わせると次のようになります。
状態 :商品Aの販売が伸び悩んでいる
状況 :検索上位にα社があり、商品Aを40%OFFで販売している
判断 :α社より安く50%OFFで出品しよう
行動 :50%OFFでの販売開始
環境変化:商品Aが行動前より売れるようになった
報酬 :売上の上昇
変化した環境 = 報酬 なので分割して記載してよいものかというのはありますが、後々理解しやすいように分けて書きました。
AIはこの報酬の最大化を計算してくれる計算機です。この強化学習は膨大なデータがあればあるほど精緻化する可能性が在ります。
この仕組みや手順などを記載した教本が本屋さんにはたくさん並んでいます。
プログラミングコーナーにはAIでよく使われる言語pythonの書物がずら~っと並んでますよね。
AIの作成スキルが身近になった証であると思います。
AIの最も重要なパートは状態/状況の分析にある
話をECに戻します。
最近、楽天市場ではルール改正やアナウンスが頻繁に行われています。
- 商品画像は白背景に枠線なし、文字比率も厳守
- 商品名はジャンルごとの命名ルールに従うように
- JANの記載は必須です
- 商品にタグ付けないと他店に負けるからしっかりタグ付けてね
- 送料等解りにくいのはだめだよ etc.
これらのルールはどこにつながっているか。
人によって読み方は様々だと思いますが、私は全てAIの基礎学習データにつながっていると考えています。
例えば、商品画像が多様である場合と統一されている場合では画像の状態は同一ですから状況分析が容易です。
JANが記載されていれば、同じ商品を扱うα社とβ社の比較が容易です。
店舗ごとに特徴がある=揺らぎの幅が大きいとこの状態/状況の読み取りが難しくなり学習データとしての汎用性が無くなってきます。
つまりは、機械学習用のデータを利用/販売するためのベースを作りにくくなります。
ECモールの稼ぎのネタは何か②
現在楽天やAmazonの目指している位置は学習データの販売であると思います。
いや、販売しないですべてを自社内で利用するのかもしれません。
ECを通じ購入履歴を正確に分析できれば、利益最大化のための計算をAIがしてくれます。
世の中はお金が回ることで構成されていますし、そのお金はモノやサービスを介して循環していきます。ECが主流になり、様々なものやサービスがネットを通じてやり取りされるようになってきた現在、ECの購入ログはまさに経営判断の材料を提供してくれるわけです。
そう考えるとモールの中に商品がそろえばよいわけですから、モール側にとってオリジナル商品を持たない中小小売は不要な存在であると言えます。つまりは風当たりは強くなる。あくまでも今の環境下ではという話ではありますが。
RON会議室の投稿について
仰る通りだと思います。
楽天だけでなくAmazonもYahoo!も同様に大手さんをどう取り込むかを考えています。
Yahoo!のPayPayモールでは小さなお店は検索結果にすら出ません。モール自体が大手を取り込んで覇権争いをしているのは紛れもない事実だと思います。
そもそも、楽天やYahoo!、Amazonといった企業さんたちは物販の商売をしたいのではなく『データ売買の商売をしたい』のだと考えると、最悪購入履歴が取れればよいわけです。
そう考えると、購入に至った経緯が不明瞭になる『店舗ごとに異なる商品名や画像』なんかは統一したいのだろうし、それを乱す小売りは邪魔なのかもしれません。
揺らぎの少ない購入データを採るためには楽天さんにとってもAmazonの形式が理想なのでしょう。
中小の小売にできる事
我々中小の小売はモールから飛び出して自店舗にてGoogle検索と戦う手段を持たないといけないのだと思います。
それこそ、インセンティブを取られないのでモールと価格では戦えるでしょう。ポイント引き合いに出されると弱いですけど。まぁPOINT施策自体が他モールに顧客を逃がさないための対策なのでしょうしね。
メーカーさんは値下がりを続けるネット通販に嫌気がさしている風潮があります。
モールがメーカーを直接取り込んでも、価格低下につながる値付けをする可能性は非常に少ないと考えられます。
個々の店舗がモールとGoogle検索で戦えば、小さな店舗での購入が増えていく可能性が在ります。
市場の中でモールを活用しない購入者が一定の割合を持つようになると、モール側はまた小さな店舗の取り込みを考えていくのだと思います。
「中小店舗は不要だけど将来的に取込みが必要な可能性もあるから喧嘩にならない程度に付き合おう」モール側は今きっとこう思ってるのだと思います。
Google検索での戦いの課題
ただし、難しいのがECの商品情報検索は検索順位が上がりにくいという点です。
例えば、楽天市場とYahoo!ショッピングと自店舗で商品を販売していたとします。
商品説明について、どのモールでも同じ説明を記載した場合、以下のデメリットが生じる可能性が在ります。
- コピーサイトではないか
- 記事に文字が少ない(商品説明などを画像で処理する事が多いため)
結果としてドメインが強い楽天やYahoo!に負けるという構図が作られます。
ではどう戦えばいいか、手段は3つあると思います。
- 商品説明を文字にてしっかり作成する
- 商品の使い方など、商品情報以外のページを充実させる
- ブログやYouTubeなど他のサイトから集客する
1は最も正当で有効ですがとにかく時間がかかります。
2か3の選択もしくは2と3の両方が有効な選択肢だと思います。
その為の下準備は早いに越したことないですよね。
まとめ
モール出店で飯は食えるか。
中小小売にとっては厳しくなっていくと思います。
今年もモールは激変していくと思います。そのどれもが中小小売にはキツイ変化になると思います。
販売は容易でも手数料や膨大な作業で利益が残らない状況は今後も加速していくのだと考えています。
その流れに翻弄され飲み込まれないためには、大企業がどう動いていくか想定する必要があります。
今後の流れを想像すると、中小小売業はモールに籍を置きつつ、自店舗の充実を図る必要があるのだと思います。
大変ですが、頑張っていくしかありませんよね。
皆さん頑張っていきましょう!
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