ポイントアップで売上UP効果はあったが利益が減少していた

ポイントアップで売上UP効果はあったが利益が減少していた

ポイントアップで売上UP効果はあったが利益が減少していた

システムが形になったので久しぶりに経営的な分析をしようと様々な情報を見ていました。

システム構想から4年、外注が匙を投げてから早や2年、この間こういった分析は(システム作成優先で)全く行ってこなかったので超久しぶりの作業でしたが「ポイントアップって怖いな」と実感をしたので戒めを込めてまとめたいと思います。

ECにて売上が落ちた時に行う策は大きく3つ

  • ポイントアップで転換率を底上げ
  • 広告を入れて集客を底上げ
  • メールを打って集客を底上げ

こうやって書くとよくわかるのですが、とっさの対策では【転換率】【集客】の2つに効くものしかありません。

事前準備を十分にできる場合は『類似商品のリンクを張る:離脱対策』『買い合わせ品を紹介する:客単価UP』と言った対策もとれると思いますが、前述の通りこの仕掛けを作るには作業時間の確保が必須です。

私は2年間システム作成に時間を振っていたので最も簡単な【ポイントUP】と【広告】で凌いできました。

それでも商品入替とかメンテナンスをさぼったので売り上げは下がりましたが、この2策を講じる事で何とかなっていた思っていました。

でも、ちゃんと分析してみるとこの2つの策(特にポイントアップ)が経営を圧迫する問題児でした。

ポイントアップで転換率がどの程度変わっていたか

うちの場合は約1%の底上げをしていました。
具体的には、通常1.7~2.4%の転換率がポイントアップを行った期間3.5%程度になっていました。
※3980円送料無料に参加していないので今は1%程度の転換率です。

200人来店して4人購入が7人になると考えると、1%の違いって結構デカいなと思います。

ポイントアップの優位性は客単価と合わせて見る必要がある

さて、そんなポイントアップ施策ですがポイントアップを一切しなかった月と比べると、店舗として支払うポイント分の支払額に100万あたり3万程度の差額がある事が解りました。

以下今回してみた計算を記載してみます。(100万当たりの計算にしています)

■ 通常転換率2%、ポイントアップ転換率3.5%として計算した時の増加倍率
3.5%(ポイントUP時の転換率) ÷ 2%(通常時の転換率) = 1.75倍

■ ポイントアップ時の獲得売上額:
30,000(ポイントUPしなかった時との経費差額)÷9%(追加負担割合)=333,333.3
※計算が面倒なので以降334,000として計算

■ ポイントアップしなかった時の推定獲得売上額:
334,000 ÷ 1.75 = 190,857.1
※計算が面倒なので以降191,000として計算

■ 利益率20%とした場合、其々の時の粗利額
ポイントUP 実施:334,000 × 20% = 66,800
ポイントUP 無し:191,000 × 20% = 38,200

■ ポイント原資増加額を含めた粗利額
ポイントUP 実施:66,800(粗利額) – 30,000 = 36,800
ポイントUP 無し:38,200(粗利額) – 0 = 38,200

一見売り上げが上がるのでポイントUP施策をとってしまうのですが、利益を比べるとウチの場合は損してた可能性が高かったんです。

これは、2年間ポイントアップで対策してきた私としては心折れる一撃でした。

調査結果を整理

ポイント10倍とした場合、(ポイント原資も計算した時の)利益額上昇の条件は以下の通りです。

  • 利益率10% + 転換率18%UP
  • 利益率15% + 転換率3%UP
  • 利益率20% + 転換率2%UP
  • 利益率28% + 転換率1%UP
  • 利益率30% + 転換率0.9%UP

ポイント5倍とした場合、(ポイント原資も計算した時の)利益額上昇の条件は以下の通りです。

  • 利益率8% + 転換率2%UP
  • 利益率10% + 転換率1.4%UP
  • 利益率15% + 転換率0.8%UP
  • 利益率20% + 転換率0.6%UP
  • 利益率30% + 転換率0.4%UP

ポイント2倍とした場合、(ポイント原資も計算した時の)利益額上昇の条件は以下の通りです。

  • 利益率2% + 転換率2%UP
  • 利益率3% + 転換率1%UP
  • 利益率10% + 転換率0.3%UP
  • 利益率15% + 転換率0.2%UP
  • 利益率20% + 転換率0.2%UP
  • 利益率30% + 転換率0.1%UP

こうやって書き出してみると、ポイント10倍というのがどれだけ利益確保に向かないかよくわかりますよね。

ポイントUP施策をしてしまう理由

前述しましたが『簡単/お手軽』な売上額上昇策というのが理由です。

私と同じ感覚でポイントアップを選択している方も多くいるのではないでしょうか。

リピーターの多い店舗(リピート商品を扱う店舗)の場合は「一度顧客にする」という対策になる為、とても意味のあるものだと思います。一方で、弊社の様にリピートしない商品を扱う店舗の場合は悪手だと言えそうです。

最善の売上UP施策は何か

先に結論を書いてしまうと、地道な対策が最善であると言えそうです。
簡単なものほど一時的な売上UP効果は高いですが費用負担も大きく、この対策で売上だけ追うと麻薬が体をむしばむように店舗の利益を蝕んでいきます。

その為、すぐに効果はないけど地道に商品ページを改変していくことが最善の策だと感じます。

売上を作る3要素について

売上を作る為の3要素についてはECに携わる者なら周知の事だと思います。

  • 集客数
  • 転換率(コンバージョン)
  • 客単価

ポイントUPはこのうちの【転換率】対策です。
其々の時どのような対策があるかまとめていきたいと思います。

転換率UP対策

  1. 商品情報の充実(商品に対する不安の払しょく)
  2. 的確/最適なLPの提示(課題解決の提供)
  3. 他店より安くする(お得感の提供)
  4. ランキング情報等の提供(商品に対しての信用の向上)
  5. 顧客レビューの提供(商品に対する安心感の提供)
  6. 商品ページ内での類似品情報の提供(店舗からの離脱を防ぐ)

どれも簡単ではありません。

まぁ、だから私はシステム化を選択したのですが…。
(項目1,3,4ならばシステム化でフォローが出来ますよね)

集客数UP対策

  1. 広告の上手な運用(単純に集客を経費で買う施策)
  2. 的確なキーワード入れ(商品名等、ワード評価の高い所に的確に差し込む)
  3. 万遍ないキーワードの取込み(セカンド、サードの取りこぼしを防ぐ)
  4. 単商品の売上UP(最近は売上額での商品評価がとても重要なので)
  5. 効率のいいジャンルへの商品登録(ジャンルによっては簡単にランキングに入る事が出来、そこからの顧客流入がある)

項目3であればシステム化で対策可能です。
その他の項目については入念な調査が必要で、やはり簡単ではありません。

客単価UP対策

  1. 送料無料ラインの調整(利益率/離れた地域への配送料等を検証して的確に決めないと大赤字の可能性もある)
  2. 商品ページ内への同梱商品の提案(項目1と合わせてプラス1~2品を目指す)
  3. 上位商品の情報提供(グレードアップの提案)

こう書いてみると、私は【客単価対策】を考えるのが最も苦手なようです。

こうまとめてみると、楽天が全店舗に実施させたかった3.980円送料無料の施策は「楽天市場の総売上を目的にしたもの」だと言う事がよくわかります。

楽天全体で行った場合はAmazonやYahoo!への離脱を防ぐ狙いもあるのでしょうが、これは他モールが同じことを行った時点で意味がなくなりますから、やはり目的としては「総取引額UP」だったのでしょう。

まとめ

ポイントアップ施策は売上が上がる為、ついつい実施してしまうのですが意外と意味が無かったようです。

これからはシステム作成に費やしていた時間を店舗管理にも割り振れるので地道な対策をしっかりしていきたいと思います。

また、感覚的に選択していたシステム化による情報収集と更新という方向性にはやはり間違いはないのだと実感する事が出来ました。

よし、がんばろ。