「個人負担分まで入っているのでは」と言われて調べたら、原因は別のところにあった — 社会保険料の見積もりの話

はじめに

一人で法人を経営し、自分に役員報酬を払っています。役員報酬をいくらにするかを考えるために、法人の人件費や個人の税金を見積もるツールを自分用に作っています。

あるとき税理士から、「人件費に社会保険料の個人負担分まで入っているのでは」と言われました。結論から言うと、個人負担分は入っていませんでした。ただ、人件費が大きく出ていたのは本当で、原因は別のところにありました。

この記事は、その指摘をどう切り分けて、何を直したかの記録です。

背景

法人の人件費は、「役員報酬」と「社会保険料のうち会社が負担する分」の合計です。ツールではこれを、

> 給与 × 保険料率 ÷ 2(会社と本人で折半)+ 給与 × 雇用保険の料率

という式で出していました。

起きていた課題

指摘を受けて、まず式を見直しました。料率を2で割っているので、足しているのは会社負担分だけです。本人負担分は額面の給与から天引きされるお金なので、この式で二重になることはありません。

それでも、人件費は実際より大きく出ていました。では、どこがずれているのか。

検討したこと

式の正しさを疑うのをやめて、「保険料は実際にどう決まるのか」を制度の側から1つずつ確認しました。すると、ツールの前提とのずれが4つ見つかりました。

1. 保険料は給与そのものではなく「標準報酬月額」で決まる 給与をいくつかの等級に分け、等級ごとに決まった金額(標準報酬月額)に料率を掛けます。給与に直接掛けると、少しずつずれます。

2. 厚生年金には上限がある 標準報酬月額は65万円が上限です。給与がそれを超えても、厚生年金の保険料は増えません。ツールは上限を考えずに給与へ掛けていたので、給与が高いほど大きく出ていました。いちばん効いていたのはここです。

3. 役員は雇用保険に入らない 代表取締役のような役員は、雇用保険の対象外です。ツールは雇用保険の分も足していました。

4. 介護保険は40歳から64歳まで ツールは年齢に関係なく計上していました。

例として、月80万円の役員報酬(料率は例)で計算し直すと、会社負担は月におよそ1.7万円、年にすると20万円ほど小さくなりました。

実際に行った対応

  • 保険料を「標準報酬月額 × 料率」で計算するようにし、厚生年金の上限を入れました
  • 給与設定に「役員報酬(雇用保険なし)」のチェックを付けました。このツールは本人1人の法人を前提にしているので、最初からオンにしています
  • 介護保険は、個人側の設定にある年齢を見て、40〜64歳のときだけ計上するようにしました。同じ年齢を2か所に入力しなくて済むようにするためです
  • 会社だけが負担する「子ども・子育て拠出金」を追加しました

直している途中で、同じ誤りが反対側にもあることに気づきました。

  • 個人の税金を計算する側でも、本人負担の雇用保険を「社会保険料控除」に含めていた(控除が多すぎて、税金が少なく出ていた)
  • 役員報酬を変えたときの試算機能には、古い式がもう1つ残っていた

計算式は1か所にまとめ、どこから使っても同じ結果になるようにしました。

得られた学び

  • 指摘の言葉と、本当の原因は違うことがある。 「個人負担分が入っている」という指摘は外れていたけれど、「人件費が大きい」という違和感は正しかった。言葉より違和感のほうを追いかけると、原因に届く
  • 式を疑う前に、制度を疑う。 式は自分が決めた前提どおりに動いていた。ずれていたのは、前提(給与に料率を掛ければよい)のほうだった
  • 同じ計算は1か所に。 会社側と本人側、本計算と試算で式が分かれていると、片方だけ直って片方が残る
  • 金額を確かめるテストがなかった。 式が間違っていても誰も気づけない状態だった。今回、制度の決まり(上限、役員、年齢)をテストで固定した

まとめ

役員報酬を決めるときの試算は、社会保険料の扱いで結果が大きく変わります。自分で見積もっている方は、厚生年金の上限と、役員は雇用保険がかからないことの2点だけでも確認してみてください。

正確な保険料は、年金事務所から届く納入告知額で確かめるのが確実です。ツールの数字が「告知額の半分くらい」になっていれば、会社負担分として大きくは外れていません。

\ 最新情報をチェック /

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください。